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FLOWERS

by MELODY KOGA

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1.
2.
3.
ノバラ 00:31
4.
5.
6.
7.
8.
ポピー 01:01
9.
アネモネ 00:42
10.
11.
12.
ナノハナ 00:51
13.
スミレ 00:42
14.
ラン 00:30
15.
16.
17.
18.
19.
20.
モクレン 00:29
21.
22.
23.
パンジー 00:30
24.
25.
26.
スズラン 00:24
27.
28.
29.
30.
31.
スイレン 00:51
32.
ドクダミ 00:44
33.
ツツジ 00:27
34.
35.
アヤメ 00:42
36.
アジサイ 00:47
37.
ツユクサ 00:21
38.
アサガオ 00:27
39.
アザミ 00:36
40.
41.
42.
カンナ 00:57
43.
ダチュラ 00:50
44.
ヒマワリ 00:33
45.
46.
47.
48.
カタバミ 00:37
49.
50.
51.
カラー 00:36
52.
53.
54.
55.
56.
カトレア 00:37
57.
ボタン 00:27
58.
ヒルガオ 00:34
59.
60.
61.
62.
クロユリ 00:46
63.
シャガ 00:30
64.
65.
66.
リンドウ 00:46
67.
68.
69.
70.
71.
サルビア 00:29
72.
73.
74.
コスモス 00:30
75.
アカシア 00:46
76.
サザンカ 00:28
77.
ムクゲ 00:31
78.
79.
80.
クチナシ 00:47
81.
82.
レンゲ 00:29
83.
84.
85.
ダリア 00:33
86.
87.
フジ 00:30
88.
89.
90.
ユウガオ 01:13
91.
92.
タンポポ 00:26
93.
94.
95.
ナデシコ 01:02
96.
97.
ルピナス 00:27
98.
ガーベラ 00:42
99.
ツバキ 00:50

about

次々と通り過ぎる花が残すあざやかな香りのように、ダジャレを思いついてしまったあとの長い残響。
休日を過ぎても響く、花の名前の休日。

- 細馬宏通 -                                                                                                                           


                                                                                     
メロディが言葉を呼び、その言葉がまたメロディを招く。
花から種が落ち、その種がまた花を咲かせるように。MELODY KOGAさんによるピアノの弾き語りは、
世界の絶え間ないいとなみとしてある。
そういう表現は意味の水準を超えたところで、笑わせ、感動させる。この新作を待ち焦がれていました。

- 矢野利裕 -       



                                                               

1. ヒヤシンス

ヒヤシンスを冷やし過ぎて
枯らしてしまいました

温度調整を誤って
枯らしてしまいました


毛布をかけても ヒヤシンス
お風呂にいれても ヒヤシンス

スープを飲んでも ヒヤシンス
ヒヤシンスはもう ヒヤシンス


2. カスミソウ

霞みそうで霞まない
カスミソウのベッドの中で

悲しい夢を見た眠り姫
悲しくない夢が見たくて


二度寝したらまた悲しい夢を見て
三度寝したらまた悲しい夢を見て

四度寝したらまた悲しい夢を見て
五度寝したらまた悲しい夢を見て


3. ノバラ

金のチェーンソーも
銀のチェーンソーも

鉄のチェーンソーも
全て私のチェーンソーです


この心臓に棘を刺そうと 生い茂る
ノバラをバラバラにするための

大切なチェーンソーです
早く返して下さい


4. シロツメクサ

換気のため 開け放った
窓から出てって それっきりの

恋人が忘れてって それっきりの
赤いマニュキュアを


シロツメクサの白い爪に塗って
アカツメクサにして

閉めきった窓の窓辺に
飾りました


5. マーガレット

花占いがやめられない
嫌いで終わるから

嫌いなはず そんなはずないのに
嫌いで終わるから


雄しべと雌しべだけになった
マーガレット 咲き乱れる

花占いはやめられない
好きで終わるまで


6. ユキヤナギ

いつまでたっても
春が来ないので

こっちのほうから 春に
会いにいこうと


電車に乗り込んで
いつしか眠り込んで

いつしかユキヤナギの
雪は止んで


7. カサブランカ

今年の春も 海へ
花束をぶん投げに

去年の春より 遠くへ
花束をぶん投げようとして


腕ごと投げてしまいました
痛いけど平気です

カサブランカの花言葉は
かさぶたです


8. ポピー

激し過ぎる春風に
吹っ飛ばされた

安っぽい オレンジ色の
嘘っぽい 一枚の花びら


ピーポーピーポーピーポーピーポー
ピーポーピーポー ポピーポピー

黄色い救急車の窓から
世界に手を振り ポピーポピー


9. アネモネ

電話ボックスの外は
風が強く

電話ボックスの中は
風が無い


内緒 内緒 内緒の話は
アネモネのね

最初 最初 最初の彼氏は
あのモネでね


10. カモミール

汽車を待つ
君の横で

僕は将来に対する
ふんわりとした不安に襲われて


カモミールティーを飲む
水筒が空になるまで

カモミールティーを飲む
身も心も空になるまで


11. シュンギク

春の青空を
目で噛み締めれば

苦くて美味しい
シュンギクの味がする


立ち食い蕎麦でいつも
春菊天蕎麦を食べているから

シュンギクの味を知っている
花の事はよく知らない


12. ナノハナ

ナノハナのおひたしに
もんしろちょうがとまりました

おひたしのナノハナに
とまったもんしろちょうは


想い出を抱きしめて
静かに泣いています

ナノハナのおひたしは
涙で水びたしです


13. スミレ

自転車泥棒に
極刑を望んでも

自転車泥棒は
無罪を主張します


私達はもう二度と
会えないかもしれない

裂けたサドルの裂け目に
スミレが咲いています


14. ラン

乗り捨てられた
ランボルギーニで

ランを育てれば
ランランラン


ガソリンはいらない
ランがあれば

ガソラン満タン
何処へだって行ける


15. ライラック

花の香りの
香水の香りより

花の香りの
花の香りが好き


ジャケットの内ポケットに
ライラックを忍ばせて

いざデート 幸運を祈る
グッドラック私


16. スイートピー

好きじゃないひとには
好きって言えるのに

肝心の好きなひとには
好きって言えなくて


ス ス ス ス スイートピー
今日もひとりで スイートピー

ス ス ス ス スイートピー
時を過ごします スイートピー


17. フリージア

叶わぬ恋を 心の中で
叶えてみるのは フリージア

叶わぬ恋を 夢の中で
叶えてみるのも フリージア


叶わぬ恋を 映画の中で
叶えてみるのも フリージア

叶わぬ恋を 現実で
叶えてみるのも フリージア


18. エーデルワイス

映画を観るお金が無いので
光を観ます エーデルワイス

ランチをするお金が無いので
光を食べます エーデルライス


遊んでくれる人がいないので
光と遊びます エーデルライフ

生涯の伴侶がいないので
光と歩みます エーデルワイフ


19. アルストロメリア

アルファロメオを売って
出来た金で

アルストロメリアを買い占めて
あなたにあげる


ほんとうに必要なものだけに
私は金を使いたい

ほんとうに必要なひとだけに
私は愛を伝えたい


20. モクレン

ないものねだりをしている
つもりはなく

ただ すべてと すべてと すべてと
すべてと すべてと すべてと


すべてが欲しいと
言ってるだけなのに

モクレンはなにもくれん
モクレンはなにもくれん


21. シャクヤク

花に目を奪われがちだが
根が凄いんだ 根が

根が 根が 根が 根が
根が凄いんだ 根が


漢方薬になるんだ
シャクヤクの花の根が

根が 根が 根が 根が
逆転するんだ ポジに


22. ヒメジョオン

熱い思いを
胸にヒメジョオン

冷たい思いも
胸にヒメジョオン


熱くもなければ
冷たくもない

常温の思いも
胸にヒメジョオン


23. パンジー

紐が千切れて
万事休す

バンジージャンプで
バンジー休す


パンジー畑へ
落下しながら

意識が途切れて
パンジー休す


24. グラジオラス

ワイングラスの中に
ラジオを注げば

ワインの香りがする
ワイングラジオラスが咲くよ


ウイスキーグラスの中に
ラジオを注げば

ウイスキーの香りがする
ウイスキーグラジオラスが咲くよ


25. クロッカス

クロッカスに味噌を塗ったら
ミソッカスになった

クロッカスは
とってもさみしそう


ミソッカスに墨を塗ったら
クロッカスに戻った

ミソッカスは
とっても嬉しそう


26. スズラン

ドクターペッパーに
スズランを活ければ

ドクターペッパーに
スズランの毒が溶けて


ドクターペッパーは
毒ドクペッパーになり

誤って飲んだらドクターの
お世話になることに


27. ハナミズキ

鼻水が止まらなくなったので
ハナミズキの花を

鼻に詰めてみたら
ちょっと奥まで詰め過ぎて


鼻血が止まらなくなったので
途方にくれています

おいしいものが食べたい
おいしいものが食べたい


28. ブルースター

20秒だけ絶望させてくれ
20秒経ったら

からっぽの心に溢れんばかりの
希望を注ぐから


星ひとつない夜空と
雲ひとつない青空の間に

挟んで 押し花にした
花の名前はブルースター


29. シダレザクラ

あと二時間だけ
花を見させて

二時間たったら
全て終わるから


放射線を描く
能の舞台の上

百万本のシダレザクラ
一斉に天を仰ぐ


30. ジンチョウゲ

鉄道レールを枕にして
おやすみなさい

はるか彼方の汽笛の音で
おはようございます


夢の中で 咲いてたのか
夢の外で 咲いてたのか

ジンチョウゲの香りだけを
鮮明に覚えてる


31. スイレン

限りなく透明に近い
真っ黒な池を埋め尽くす

限りなく透明に近い
真っ黒な睡蓮


垂らした釣り糸の先の
釣り針は とっくに喰われてる

限りなく透明に近い
真っ黒な鯉に


32. ドクダミ

ドクダミの匂いがする
雨に濡れた縁側に

二日酔いの頭を
四つ打ちのリズムで打ち付ける


忘れたい事しか無い
忘れたい事しか無い

もっともっと 白くなれ
追憶よ


33. ツツジ

五月の青い空に
ツツジの花が飛んでいる

よくよく見ると みつばちが
ツツジの花を着ている


披露宴にハレーションを起こす
ショッキングピンクのウエディングドレス

みつばちの ロイヤルウエディング
引き出物は ロイヤルゼリー


34. カーネーション

首都高を走るタクシー
運転手はいない

後部座席で眠る
胎児のように眠る


カーネーションを映し出す
カーナビゲーション

真夜中のお腹の中で
母の日を祝う


35. アヤメ

一枚目の舌は
優しい嘘をつくために

二枚目の舌は
楽しい嘘をつくために


三枚目の舌は
悲しい嘘をつくために

雨に打たれ だらりと垂れた
アヤメの花びら


36. アジサイ

ピアノを弾いてます
風邪を引いてます

情熱はあります
高熱もあります


熱気はないけど
湿気はあります

アジサイよ アジサイよ
こんな日はあなたにアジサイよ


37. ツユクサ

明日の天気が気になるが
昨日の天気も気になるぜ

傘は持っているか
過去は待っているか


雨上がりの瞬間だけを
二万回繰り返し

それでもまだ ツユクサは
朝を待っているか


38. アサガオ

終わらない夏休みの
終わらない自由研究

アサガオと私の
DNAを組み合わせて


シャンデリアを咲かせたい
シャンデリアを咲かせたい

いつか 夜空に大輪の
シャンデリアを咲かせたい


39. アザミ

強者どもが 夢のあと
弱者どもも 夢のあと

この場所には かつて
たくさん血が流れた


強者どもが 夢のつづき
弱者どもも 夢のつづき

アザミの葉っぱで 指を切り
ちょびっと血が流れた


40. ユキノシタ

七月の太陽の光が
雪のように降り続けて

僕らの三千世界は 今
一面の銀世界


あの大きな栗の木の下の雪の下に
咲いたユキノシタの下で

あなたとわたし 仏と鬼
仲良く眠りましょ


41. キンギョソウ

スーパーボールでも
すくってれば良かったのに

金魚なんかすくうから
命の秘密を知ることに


夏の終わり 初恋 その他もろもろ
胸を締め付けるあらゆるもの

秘密の金魚のお墓に咲いた
秘密のキンギョソウ


42. カンナ

真っ赤なカンナの花は
命の削り節

世界という名の
お好み焼きの上で


ひらひらひらひら
踊り続ける

恋を忘れた乙女の
短い命の削り節


43. ダチュラ

これは現実かな
それとも夢かな

確信が持てないカナカナが
カナカナカナカナ鳴く頃


真っ白な日傘を閉じれば
真っ白なダチュラの花が開く

あの夏の日 神様達は
何を話していたのかな


44. ヒマワリ

午後の紅茶を
午前に飲んでしまいました

もう おしまいです
でも これははじまりです


まっぷたつに折れたステージで
まっぷたつに折れたヒマワリ抱いて

踊り続けるバレリーナ
幕はまだ下りてない


45. ハイビスカス

セッションはしてもいいけど
殺生はいけないよ

私達と全く同じテンションで
彼等も死を 恐れているんだ


ミミズだって オケラだって
アメンボだって ハイビスカスだって

みんな みんな 恐れているんだ
友達なんだ


46. サルスベリ

春夏秋冬の無限ループの
途中の 僅か三ヶ月

サルスベリの花が咲いて
散るまでの 僅か三ヶ月


恋に落ちてから
恋を失うまでの

輪廻転生の無限ループの
途中の 僅か三ヶ月


47. ゴクラクチョウカ

ゴクラクチョウカは 極楽の
鳥にも見えますが

ゴクラクチョウカは 地獄の
鳥にも見えますね


鳥になりたい 鳥になりたい
蓮池の上も 血の池の上も

ニュートラルに飛び回れる
鳥になりたい


48. カタバミ

下を向いて歩いていたら
涙がこぼれてしまったので

上を向いて歩いてみたら
花を踏んでしまいました


小さな星のような
名も無い星のような

ぼくらのような
カタバミの花を


49. オオイヌノフグリ

枯れ木に花を咲かせられなくて
落ち込んでる 花咲か爺さんを

慰めている あの爺さんは
花眺め爺さん


すでに咲いている花を
ただひたすら 眺めるだけの

花眺め爺さんは 今日
オオイヌノフグリを眺めます


50. ツキミソウ

月が見たいのに
月が見れないツキミソウ

引っこ抜いては植え直す
月が見えるところへ


ツキに見放され
月が見れないツキミソウ

引っこ抜いては植え直す
ツキが見守るところへ


51. カラー

花瓶に飾られることなく
捨てられた 世界中の

数えきれない色彩の花束を
フルカラーの カラーの花束を


粉々になるまで抱きしめて
太陽と一緒に煮込んで

炊きたてのご飯にかければ
カラーライスの出来上がり


52. オシロイバナ

今日のおしまいまで
あと8時間を切った頃

オシロイバナはにわかに
高級娼婦になる


夕刻の陽の光の中に消えた
恋人の面影を探して

男達はにわかに
雨になる


53. ツリガネソウ

あの鐘を鳴らすのはあなただと
言われたものの

あの鐘が どの鐘か
まったくわからず


世界中の鐘という鐘を
やみくもに 鳴らしてみる

ツリガネソウの花も
いちおう 鳴らしてみる


54. クレマチス

何故だと思いますか
ずっと恋人がいないのは

理想が高すぎるからですか
そうかも知れませんね


クレマチス クレマチス
あの娘を私にクレマチス

私の理想の恋人は
マチスの絵の中


55. ホウセンカ

誰か
いませんか

そうですか 誰も
ホウセンカ


空に消えてゆく
あの赤くて丸いものは

なんですか
風船か


56. カトレヤ

花屋の娘に
恋をして

今日も花屋へ
花を買いに


そのカトレヤを下さい
失敬 バラですか

そのカトレヤを下さい
失敬 これもバラですか


57. ボタン

死刑台のエレベーターに乗り
屋上のボタンを押して

極上のボタンが咲き乱れる
空中日本庭園へ


極上のボタンの甘い香りに
優しく包まれながら

死刑台のエレベーターガールと
デートをしています


58. ヒルガオ

暇を潰すために
海に来たものの

海は海で暇で
暇で暇で


暇を潰すはずが
暇に潰されて

不貞腐れて
ヒルガオと昼寝


59. ミヤコワスレ

忘れものを取りに
戻ったけど

何を忘れたか忘れて
また戻ったけど


軒先きに咲いていた
ミヤコワスレの

佇まいが忘れられず
また戻った


60. トルコキキョウ

トルコ行進曲に合わせて
部屋を掃除をしていたら

部屋ごと捨てたくなって
部屋ごと捨てました


トルコキキョウの咲き乱れる
トルコに帰郷して

トルコアイスを舐めています
私は行進をやめました


61. トリカブト

子供の日には必ず
カブトを飾ります

応接間のテーブルに
トリカブトの花を飾ります


子供のままでいる事を
許していただけないのなら

カブトを被ります
トリカブトの毒を被ります


62. クロユリ

私の心の闇の 闇の色は
クロユリの色

クロユリの色は 黒ではなく



光に色があるように
闇にも色があり

光に愛が溢れるように
闇にも愛が溢れる


63. シャガ

探す事に疲れ
探す事をやめて

しゃがんだら
シャガが咲いていた


シャガす事に疲れ
シャガす事をやめて

眠ったら
釈迦が現れた


64. ラッパスイセン

壊れたオゾン層の
壊れたところに

ラッパスイセンが
群生しています


ラッパスイセンの正体は
壊れたラッパの亡霊です

音の無いファンファーレが響けば
祝祭の始まりです


65. マンジュシャカ

ほどけた運命の
赤い糸の

はしとはしを結び
あやとり


とればとるほど
こんがらがり

頭ん中が
マンジュシャカ


66. リンドウ

能力の玄界灘に
バナナボートを浮かべて

ぼろぼろの朧月の光で
肌を焼いています


自ら望んだ島流し
BGMは波打つ水面に

狂い咲くリンドウの
優雅で感情的なワルツ


67. シクラメン

シックシック シックシック シクラメン
シックシック 病気のシクラメン

クラクラ クラクラ シクラメン
クラクラ 眩暈がシクラメン


だが 悲しいものは無い
悲しいものはひとつも無い

言葉を知らない子供のように
楽しく歌を 歌うだけ


68. クリスマスローズ

戦闘機が行き交う
夜空に

命がけでソリを走らせる
サンタクロース


俯いたまま耳を澄ます
クリスマスローズ

微かな鈴の音だけを
聞いています


69. アマリリス

こんなにいりません
困ります

余ります
絶対に余ります


ごめんなさい
謝ります

アマリリス
素直にアマリリス


70. ブーゲンビリア

恋に破れて
ブーゲンビリア

言葉が暴れて
ボーゲンビリア


呼吸を整えて
心を鎮めたら

楽しくお買い物
バーゲンビリア


71. サルビア

来るものを拒み続け
去るものを追い続け

辿りついた
ビアガーデン


空っぽのビールジョッキに
サルビアを手向け

ビアガーデンを去る
サルビアガーデン


72. リュウゼツラン

昨日の敵は
今日の友だが

昨日のテキーラは
今日もテキーラ


今日のリュウゼツランは
やけに饒舌ラン

一滴も残さず
彼の言葉を飲む


73. キンモクセイ

木星が
死滅したその時

宇宙全体が
一瞬だけ


キンモクセイの香りに
包まれた

おかしいね
木星のくせに


74. コスモス

秋の陽射しで
甲羅干しする亀の

甲羅に咲いた
コスモスが揺れている


コスモス亀よ
亀さんよ

甲羅に広がる
コスモも揺れている


75. アカシア

アカシアの雨は
夜更けに

アカシアの雪に
変わるかも


アカシアの雪は
夜明けに

私が生きた証の
吹雪に変わるかも


76. サザンカ

ざんざん降りの
雨に打たれたり

かんかん照りの
太陽に焼かれたり


散々な目に遭った
サザンカの目に

燦然と輝く
サザンクロス


77. ムクゲ

一日だけ
咲く事を許され

咲きたいだけ咲いて
報われたムクゲ


明日も昨日も無い
今日も無い

一日を終えた
ムクゲは無垢で


78. ラベンダー

このベランダで
私は学んだ

ラベンダー色に染まる
空が教えてくれた


ラベンダー色に燃える
空は知っていた

ラベンダー色の
空はベテランだ


79. カキツバタ

旅人が旅の恥を
掻き捨てた

掻き捨てられた旅の恥を
拾い上げた


小説家が小説にして
書き上げた

書き上げられた小説は
カキツバタ


80. クチナシ

ディナーが運ばれて
死人にクチナシ

口がないから
食べる事が出来ない


デザートが運ばれて
死人にオクチナオシ

元の通りに
口を直したい


81. フクジュソウ

彼らの命を奪った
時の流れに

復讐するはずが
服従しそう


彼らに命を与えた
時の流れを

祝福するはずが
フクジュソウ


82. レンゲ

レンゲを摘んだら
胸が痛んだ

胸が痛むので
病院へ行き


レントゲン写真を
撮ってもらったら

レンゲの影が
写り込んでいた


83. チューリップ

霧の中に消えた
あなたの唇

霧の中で探して
五里霧チューリップ


夢の中でも探した
あなたの唇

夢の中で見つけて
無我夢チューリップ


84. コチョウラン

飛んでいるのは
蝶か 私か

咲いているのは
私か 花か


夢の裏側を
くすぐって

眠りの邪魔をする
コチョコチョコチョウラン


85. ダリア

ダリア ダリア ダリア
記憶の彼方で揺れる影

偶然を装い
私を跳ねた


ダリア ダリア ダリア
彼女はプロの当たり屋

赤いドレスを装い
私に請求した


86. テッポウユリ

四方八方発砲する
テッポウユリ

テッポウユリは
発砲ユリ


銃弾の代わりに
瑞々しい香りを放つ

発砲ユリは
発砲美人


87. フジ

悪天候のため
飛べなくなった燕が

藤棚の上に
不時着すれば


藤棚の下に降る
藤色の雨が止み

フジ議なフジ議な
藤色の虹が出る


88. ゲッカビジン

月が欠けている
私も欠けている

著しい
欠陥がある


ゲッカビジンの血管を
流れる月光

月が満ちていく
私も満ちていく


89. ワスレナグサ

千年前の失恋を
まだ引きずっている

千年前の恋人に
まだ未練がある


時間がもったいないから
早くワスレナグサ

時間はまだまだあるから
次をミツケナグサ


90. ユウガオ

誘蛾灯に集まる
優雅な蛾には

誘蛾灯に集まる
理由がある


誘蛾灯に集まり出す
夕方まで

ユウガオが咲くまで
まだ余裕がある


91. ミズバショウ

深刻な水不足で
夏が来てすぐ

ミズバショウの花が
枯れている


フデブショウの花は
今年も咲いている

夏の光より白い
便箋の上に


92. タンポポ

大地が揺れても
大地が裂けても

淡々と根を伸ばす
タンポポ


大空が燃えても
大空が消えても

淡々と種を飛ばす
タンタンポポ


93. レンギョウ

南無妙法レンギョウの花
雨に唱えれば

胸の痛みも 頭の痛みも
歯の痛みも 胃の痛みも


全ての痛みが
黄色い蝶になり

南無妙法レンギョウの花
空に消えます


94. トケイソウ

花の命は短いが
花の歴史は長い

咲いては枯れ 咲いては枯れ
なんだかんだで一億年


人は時計を発明した
時を知るために

神はトケイソウを咲かせた
時を嘲笑うために


95. ナデシコ

地獄の底に
ナデシコ

こんなとこに
何故ナデシコ


こんなとこで
何で咲けるの

降りかかる火の雨を
何で避けないの


96. マリーゴールド

全ての雨を金に
変えようとして 間違えて

全ての金を雨に
変えてしまった 錬金術師


出来損ないのゴールド
咲き損ないのマリーゴールド

夕陽に照らされた天気雨
歩道を激しく打つ


97. ルピナス

腹を空かせた狼が
最後に口にしたのは

肉でも 水でもなく
弱音でした


倒れた狼の
乾いた喉を突き破り

乾いた空を突き破り
咲いたルピナス


98. ガーベラ

ガーガーベラベラ ガーベラよ
自ら首を落とし

ガーガーベラベラ ガーベラよ
茎だけになった ガーベラよ


マリーアントワネットが
ギロチン台の上で

最期に見た 空の色を
教えておくれ


99. ツバキ

ぽとっと落ちた
椿の花を

椿の油で
からっと揚げました


胸を締めつける記憶も
残酷な運命も

天ぷらにすれば
おいしくいただけます

credits

released December 31, 2017

MELODY KOGA:Vocal, A.piano

All Songs & Lyrics written by MELODY KOGA
Recorded, Mixed & Masterd by MELODY KOGA
Photograph & Design by MELODY KOGA

Song Field 2017

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MELODY KOGA Japan

同じコード進行(FM7 Em7 Dm7 CM7)でピアノを弾きながら、短い歌(30〜60秒くらい)をたくさん歌う。持ち歌は1000曲以上。12時間におよぶコンサートを行うことも。

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